京都の気温は連日35℃超。そして猛烈な湿気。
それでもわたしはきものを着る。理由は簡単、(ほぼ)きものしか「ない」からだ。
年を重ねて、何を着ても以前のようには似合わなくなった気がする。「これを着ていれば自分が機嫌よくいられる」洋服が少なくなってしまい、ずいぶん処分した。全身をほぼ包んでくれるきものは、自信喪失気味のわたしにやさしい。
とはいえこの酷暑。風通しの良いワンピースは何枚か残したけれど、できるなら着たくない。
そんなわけで、きものの暑さ対策はとても切実な問題だ。紐一本でも体感温度が違うので、まずは麻Readyをヘビーローテーション。着る時間が短縮できるのもありがたい。
ネット上には「きものを涼しく着るラためのライフハック」が溢れている。帯回りに保冷剤を詰める(自分がケーキになった気がする)、インナーにメントールのスプレーをする(これはなかなか効果的)など、片っ端からやってみたが、どれも対処療法的。もう少し、根本的な対策はないものか。
公言するのにためらいがあるのだが、わたしがたどりついたひとつの答えは、「ショーツを履かない」こと。
鼠径部を締めつけないと、本当に楽で涼しいと気づき、一部でものすごく推されている「湯文字」という伝統的な和装下着にチャレンジしてみた。形状としては短い裾除けで、ショーツの代わりに腰に巻く。上手に締めて巻くと骨盤を持ち上げる効果もあり、お手洗いもすこぶる楽。そしてこれはもう、ビックリするほど涼しい。高温多湿の日本の夏、足の間に布がないとこんなに涼しいのかと驚いたが、現代日本人のわたしにはいささかハードルが高い。しかしこの快適さを手放すのはどうしても心残りだ。さて、どうしたものか。
よくよく考えてみた。
きもののボトムの下着として、わたしは年中ステテコを愛用しているが、やはりその下にはショーツを履く。何が暑いって、要するに鼠径部を圧迫するこれが暑いのだ。なんとかショーツなしで過ごす方法はないものか…と「ショーツなし」とか「ふんどし」とか、もっと直截に「ノーパン」といったキーワードであれこれ検索し、最適解を探した。
どんなに暑くても、夏きものは「すずしい顔」で着てこそ。生成りの小千谷縮に麻の帯で出かけると、会う人、会う人、「涼しそうですね」と喜んでくださる。切実な暑さ対策。湯文字にも、もういちどトライしてみたい。
奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。
岩澤さんブログ「みみひげしっぽ通信」
http://iwasawa-aki.jugem.jp/