27_「綾小路通新町東入ル」

nonoの入っているマスギビルを初めて訪ねたときのことを、今でもよく憶えている。

初回のコラムに書いたとおり、自分の好みど真ん中ストライクのきものを作っている会社が徒歩圏内にあると知って、いそいそと(のこのこと)出かけて行ったのだ。

どうぞお越しくださいと言ってもらったけれど、敷居の高いショップだったらどうしよう…初心者で迷惑をかけたら…素っ気ない対応をされたらどうしたらいいんだ…と躊躇ったけれど、それでもこのシリーズをもっと見てみたいという欲にはかなわなかった。

綾小路通新町東入ル。京都のまんまん中、そしてきもの業界の「へそ」みたいな場所に立つ大きなビル。本当にここでよかったの?何度もテナントのプレートを確認する。間違いない。ちょっときしむ音のする自動ドアから、おそるおそるこんにちはと声をかけて入ってみて、(いろんな意味で)拍子抜けした。

誤解を恐れずに言うと、なんだか「商売っ気がない」のだ。

応接セットは置いてあるものの、クールでシャープな商品から想像していたようなきらっきらのショップではない。畳が敷いてあって、奥では枡儀の社員の方々がPCを見ながら仕事をしている。ネット上で見たあれこれ、とりどりのnonoの商品が置いてあるけれど、これ見よがしのディスプレイはない。なんというか…B to Bのメーカーさんの事務所にお邪魔しました、という感じ。

一方で、飛び込みの一見さん(しかも若葉マーク)に対応してくださったスタッフの方々の笑顔は実にフレンドリーで、身構えていた力が抜けた。実物を見たかったGritterのいろいろ、帯ベルト、クロコ調のカレンブロッソと次々見せていただいた。どれも画面上で見るよりとてもずっと魅力的で、思い切って来てみた甲斐があるというもの。どれが似合うか、着やすいか、親身になって相談に乗ってもらい、楽しくあれこれ悩んだ末、Gritterを一着、仕立てをお願いして、帯ベルトや羽織を抱えて帰ったあのうれしい気持ちは、今も変わらない。

その後、nonoのショップはマスギビルの耐震補強工事を機にリニューアルされた。新しいショップは、いかにもnonoらしいシャープなモノトーンで統一されていて、商品のディスプレイも格段に見やすく、品数も増えて見やすくなった。…なんだけどやっぱり、「売らんかな」の押しつけがましさはない。いつ行っても居心地がよくて、ちょっとだけのつもりがついつい長居してしまう。それは、商品の魅力や店内のしつらえはもちろん、上田社長ご夫妻をはじめ、スタッフの皆さんの温かいお人柄によるものだろう。

きものをネットで買うことも当たり前になってきたけれど、実物を見ると、「絶対これ!」と決めていたものより他の色のほうが顔うつりが良かったり、逆に全くノーマークだったものが目に飛び込んできたりする。コーディネートだっていろいろ試せる。これも、実店舗に足を運ぶ醍醐味のひとつだ。何よりも、実際にその製品を生み出した人と話すことは本当に楽しい。

入りにくいのはビルの入り口だけ。ぜひ一度、nonoのショップにもお運びください。

nono現在の店内の様子。

≪nono pop upのお知らせ≫

2024/10/12.13土・日にnonoのポップアップショップをオープンいたします。
場所はnonoのあるマスギビルから徒歩5分のギャラリーsnother place KYOTOにて。
新作Gritterからネットに載っていないお値打ちアウトレット品も。
ぜひお気軽にお越しくださいませ。 詳細は以下のリンクより


奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。

岩澤さんブログ「みみひげしっぽ通信」
http://iwasawa-aki.jugem.jp/

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