36_羽織紐ジプシー、わらじを脱ぐ。

 「ずっと探しているのだけれど、どうしても『これ!』というものが見つからない」。
きものを着る人には誰しも、そんな小物があるのではないだろうか。わたしにとってはそのひとつが羽織紐だ。

 羽織紐は意外なほど目を引く。シンプルでクールなデザインを探しているのに、「女性用」とされているものは値段も含めてよりどりみどりだけれど、貴石を使ったものからハンドメイドまで、だいたいがしっかりフェミニンでスイートなものが多い気がする。かといって男性用ははっきりマニッシュでゴツいものが多く、これはこれで小柄なわたしにはどうにも具合が悪い。いちばん好みに近かったのは、ティファニーの古い銀のブレスレットを改造して、端に引き輪のカンをつけた自家製?だったのだけれど、やはり「それ用」に作ったものでないと使いにくい。仕方なく、シンプルでクリアなアクリルキューブをつないだものとか、ベビーパールと金属製パーツのコンビとかでお茶を濁してきた。そこへnonoさんからリリースされたのがチェーン羽織紐。「待ってました(もう既に何回目かわからない)」!

 主宰の上田瞳さんから、そもそもの出発点は、ご自身が出産後に突然金属アレルギーを発症してしまい、アレルギー対応の医療用ステンレス製のアクセサリーばかり着けていたことだとお聞きした。nonoのきものにも洋服と同じようにシルバー系アクセサリーが似合うんじゃないか?と、ご自身のために買い求めていたパーツで作ってみた、ということらしい。結果、季節も性別も問わない、クールで汎用性の高い羽織紐が誕生した、というわけだ。

 繊細で華奢な表情のものから、大柄な男性にも負けない大ぶりなものまで、ちょっと冷たくて硬質、メタリックなテクスチュアは、nonoのコンセプトとデザインにとても似合う。二連にすることも、ブレスレットにすることもできる。小さくても、「自分の好きなものを、好きなように身につければ良い」というnonoの姿勢が、鮮やかにかたちになった商品だと思う。

 迷った末にわたしが選んだのは、穴の開いた小さな円盤をたくさん連ねたChips。モノトーンの帯の上で、想像よりずっとよく映える。中央のマグネットで開閉できるのも良い。確かにフェミニンなのだけれど、ロックなテイストも感じるし、無機質な輝きでキラキラするのに、どこか草の実を思わせるようなさらさらした手ざわりもある。

 次の一本は、もう少しハードなものを。いろんなデザインを試しやすい価格帯も魅力的。どれにしようかな。


奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。

岩澤さんブログ「みみひげしっぽ通信」
http://iwasawa-aki.jugem.jp/

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