白足袋は、用事(お茶会とか、セレモニーとか、お見合いとか)があって、きものを着ているひと。
色足袋は、用事はないけどきものを着ているひと。わたしはこっち。
きもので出かけ始めたころ、町を行くひとの着姿を見ては、そう思っていた。今は大した勘違いだと頭ではわかっているが、なかなかこの思い込みから逃れられない。自分の好みは色足袋だというだけなのに、今でも白足袋の方とすれ違うと、自分が道楽者のひま人のように思えて、なんとなくうつむき加減になってしまう。
しかもわたしは行儀が悪くて、玄関の土間なんかにちょいっと足袋のまま降りてしまうことがある。白状すると、どう頑張っても白足袋の足裏を真っ白に洗いあげるのは大変なので、どうしても二の足を踏んでしまう…というのが正直なところだ。おまけにタイトに足を包むこはぜだと、夕方には足がむくんで辛くなることがある(こはぜってエレガントで色っぽくてとっても憧れているのに…)。
となると、もっぱら愛用するのは「靴下タイプの色足袋」ということになる。洋服でもきものでも「おしゃれは足もとから」なのは同じ。足袋は意外なほど着姿全体に響くのでおろそかにはできない。どういうわけか、この靴下タイプにはやたら派手な色や攻めた柄、ポップでラブリーとか純和柄なんかが多くて、過激ではないけど無難でもない、シックでモダンなデザインは探してもなかなか見つからない。nonoのdual(ストレッチ足袋)、特にバイカラーのシリーズはどれも、おおそうきたか!という心憎い配色で、真夏以外はとっかえひっかえほぼこればっかり履いている。
そして…黒ベースはもちろん、白ベースでさえ足裏に薄いグレーが入っている!きっとこれ、足袋をしょっちゅう洗うひとが作ったんだろうなぁ…。
かくしてわたしはやっぱり時々、足袋のまま土間に降りてしまうのです。
(個人的には…黒・白のベースカラーに合わせた「もう1色」が必ず足の内側、親指のほうに配されているので、履くときに左右を迷わずに済むのが地味にノーストレス)
奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。
岩澤さんブログ「みみひげしっぽ通信」
http://iwasawa-aki.jugem.jp/