ついつい手が伸びるdateだが(おそらく日常的に着る人ほどそうなる)、手放しで万人におすすめできわけではない。なにしろお太鼓部分が「ない」のだ。
背中の帯結びは着姿の見せどころ、これがないときものを着る楽しみが半減すると言われればそのとおりだ。誰もが悩む、上手くいかないおはしょりをたれ先でカバーすることもできない。このあたりが気になる人には向かないと思う。が、半幅帯、それも平面的な帯結びを好む人にはあまり抵抗がないだろうし、上に何か羽織ってしまえば問題ない。もっと言うと、通常、上に羽織ってしまうと帯結びは見えなくなるが、身体の前にくる結び目は、色目がリバーシブルなこともあって意外なほどポイントになる。Gritterのようなシャープでモダンなきものに似合うのはもちろん、わたしは敢えて、黒地に白だけで描いたむじな菊の小紋や、黒に近い深緑、無地の丹波木綿なんかに締めている。これからの季節はブーツにも合わせたい。もっと濃度の高い洋装ミックスのスタイルにもごく自然になじみそうだ。
きものを着ること以上にハードルの高い「帯結び」で難儀しているビギナーが、まずは「きものを着てお出かけする」楽しさを知るにももってこいだろう。このdateをスタートに、半幅帯、なごや帯、袋帯といろんなタイプの帯にチャレンジして、多彩な帯結び、そして帯締めや帯揚げとコーディネートするきものの醍醐味を知っていくのもきっと楽しい。きものを着慣れたかたにもぜひ試してほしい。目から鱗というか、きものが持ついろんな可能性に気づく人は多いと思う。
nonoとお付き合いを始めたごく初めのころ、このdateにしても、Readyにしても、とっても斬新で画期的ですね…みたいなことを上田社長にお話ししたことがある。一言一句正確ではないが、淡々とした口調でこんな答えが返ってきた。
「お客さんがそれぞれ自分でこういうことやったらね、きっといろいろ言われるでしょう。でも、我々メーカーがやれば、お客さんは『メーカーさんがこういうもの作ったから、出したから、着てる』と言えるやないですか。だから、我々が作らなあかんのです」。
「これからのきもの」やモノづくりに対するnonoのこんな姿勢を、わたしは深く信頼している。
奈良女子大学文学部を卒業後、美術印刷会社の営業職、京都精華大学 文字文明研究所および京都国際マンガミュージアム勤務を経て、2015年に独立。岩澤企画編集事務所を設立する。
ライター業の傍ら、メディアにおける「悉皆屋さん」として様々な分野で活躍中。
30歳のときに古着屋で出会った一枚のスカートをきっかけにモード系ファッションの虜となり、40代から着物を日常に取り入れるようになる。現在、病院受診と整体治療のある日以外はほぼ毎日、きもので出勤している。
岩澤さんブログ「みみひげしっぽ通信」
http://iwasawa-aki.jugem.jp/